夢みるHappy marriage
その核心に迫る質問にはスルーされ、榊原さんも食べ物で吊ってきた。
「なぁ寿司食べたくない?」
しかし私だって、そんな簡単な女じゃない。
回らない寿司だって、もう一人で食べに行ける。
そこそこコスパの良い美味しいお店だって知ってる。
「何、急に。別に食べたくない」
「いくらとかウニは好き?」
私の好きながネタが出てきて、思わずうっとなる。
「ふ、普通」
「じゃ肉を巻いたウニの軍艦と、いくらのこぼれ丼は?」
「うー」
「大トロも付けよう」
「好き……っ!」
ついに根負けして、まんまと社長様と会場をあとにすることに。
「なんでお前はちーちゃんと違ってこんなに時間かかるんだろうな。あの子なんか物分かりが良いから、ほんの数秒で連れてかれてたのに」
「物分かりが良い?逆に、何も分かってないからじゃない」
「俺が言うのもなんだけど、止めなくて良かったの?」
「ちーちゃんはね若いんだからもう少し遊んで男という空しい生態を知った方が良い。あの人なんて、遊び慣れてるからうってつけじゃない?夢から覚ましてもらって現実を教えてもらった方が良い」
「なんか遊ばれてこいって言ってるように聞こえるんだけど」
「まさしくその通りだけど。私がちーちゃんに化粧したところで、自分から変わろうとしなきゃ意味がない。付き合う男のレベルが極上であれば、女の外見レベルも跳ね上がるものだよ」
「そういうものか」
私がそうだったもの。
20kgの地獄のような減量、支えてくれたのはあの人だった。
もう一度、一目でも良いから会いたくて死に物狂いで頑張ったのに、自分に自信を持てた頃彼はもうこの街からいなくなっていた。