夢みるHappy marriage
週末に控えたレセプション。そして、いよいよ来月からはプレオープンする。それに向けて榊原さん達が会社へ来る頻度も増えていた。
「客用のテーブルとイスの搬入ギリギリになるみたいですけど大丈夫ですか?」
「こだわりましたのでね。そこは仕方がないです」
「そうですね。色々、無茶を言ってすいませんでした」
「いえ、以前計画していた時より格段に良いお店になったと思います。是非レセプションいらしてくださいね」
「ありがとうございます」
中川さんと榊原さんが、複数の資料を前に最終確認していく。そして最後に、私が作った招待状を渡していた。奥森さんの姿がないことに気付き、他の社員さんに聞くと、彼女なら急用で先に社へ戻ってしまったと。
招待状を渡せていないことに慌ててその姿を追いかけた。
正直彼女とはまともに話したことがない、だから少し緊張している。
だって少しクールそうだし。もし下まで降りて会えなかったら、榊原さんから渡してもらおう。
「あ、」
ちょうど社から出て行くところを見つけて、その背中を追いかけた。
「すいませんっ」
息を切らす私に、不思議そうな声が返ってくる。
「どうしたんですか?」
「あの、レセプション、是非いらっしゃってください。これ招待状です。良かったら、片桐さんにもお渡しして頂きたいのですが。うちの野村も反省していましたので」
矢継ぎ早にそう伝え、二枚の招待状を渡す。良かった間に合って、やっぱりこういうのは直接渡したいもの。
「わざわざ、ありがどうございます。おそらくこれで最後の打ち合わせになると思うのですが、最後まで参加できずすいませんでした」
「いえ、お忙しいのでしょうから仕方がないです」
「ありがとうございます。うちの片桐にも渡しておきます」
それでは、またレセプションで、と別れようとしたところ、奥森さんの目線が下にずれ、すごく言いにくそうに聞いてきた。
「あ、あの、桜井さんは、うちの社長とはどのような関係なんですか?」
あぁ、やっぱり見られてたか。一瞬ドキっとして、言葉に詰まる。一間置いて、下手に誤魔化すより素直に答えた方が得策だと、事実を伝えた。