ウェスター国戦師(いくさし)の書。2~優しい後悔~
自分があの時……王様にゆくゆくは戦師になるために、と城での修行を勧めて頂いた時に。


城に行きたい、なんて言いさえしなければ。


父さんはこんなにも過労することはなかった。


母さんも人一倍の苦労なんて、しなかったはずだ。


……それが分かっているのに、今の誇りを否定はしたくない。


でもそれでは、父さん母さんの半生は、自分が踏みつぶしたも同然だ。


二人を犠牲にして、……今の自分がある。


だから、あの夢の中で二人に声をかけられなかった。


なんて言っていいか分からなかった。


二人なら、笑って許してくれるだろうとも分かってる。


だからこそ……胸が痛い。


「……お父さんも、お母さんも。

戦師シンラの親だってことを、誇りにしてらしたはずよ。

全部を自分のせいにして、責めたりしないで。

お父さんお母さんのためにも、リンちゃんのためにも」


彼女の言葉が温かかった。


……限界だった。


もうかっこ悪いだのどうだの、言ってられなかった。


最後の理性で、大声だけは出さなかったけど。


我慢していた分、嗚咽はなかなか止まらなかった。


その間彼女は、優しく背中を撫でてくれてた。


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