ウェスター国戦師(いくさし)の書。2~優しい後悔~
再会
昨日の夕方、ウェスター城の屋上にて。


エイプリルフールだったのを切っ掛けに、モモと激しく口論した。


自分や父親よりも、母親は他の男性を選んだ……それがどうしても許せないまま7年も時が過ぎてしまったんだけど、彼女は言った。


どうして母親を信じてあげられないのか、と。


……大好きな母親だったからこそ、ショックが大きすぎた。


そして、何も知らないで一人先に逝ってしまった父さんが不憫でたまらなかった。


だけど、母親は自分の行為を悔い、一人で生きていく覚悟をしたんだ、ということをようやく理解できた。


そこへ、ウェスター国参謀ウキョウさんことウーさんが、とんでもない指令を出した。


『お母さんの居場所も分かったことですし、早速明日会ってきなさい。

それから、お母さんの焼いたレーズンロール、皆の分も買ってくるように』と。


かくして任務とはいえ、母親に会いに行くことが(ほぼ半強制に)決まってしまったのだ。


我ながら……恥ずかしい話だけど。


その晩はわくわくというか、そわそわというか、もじもじというか、あせあせというか……いろんな感情が混ざりあった。


何か土産でも持って行くべきなのかとか。


自分と面識があるイサキの両親達の前で、今更彼女達とどう接したらいいのかとか。


いやそもそも、義理とはいえ今更妹がいるなんて、なんかくすぐったいような変な感じだ。


そのそわそわっぷりを、よりによってケイゾウに指摘されたから、格好がついたものじゃない。


やっぱり嬉しいんだろ、なんて言われたから、まあな、と答えた。


意外にも、よかったな、とか言うから、おう、とだけ返事した。


そしたら思いっきり小突かれた。


『俺さあ……母親って知らねえからさ。

だって物心ついた時にはもういなかったし。

親父もあんまり言わねえし。

だからかな、母親のイメージってのがシンラのお袋さん、なんだよ。

うん、やっぱガキの頃の印象って強えよな。

だから、色々あったけど。

シンラがようやくお袋さんに会いに行くことになってさ、なんかホッとしたってか……よかったなって、本当思うよ』


彼からは、母親の浮気のせいで彼女の非難ばっかり聞いてきたから……新鮮だし、正直嬉しかった。


小突かれた分は、膝カックンで返しといてやった。


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