離婚、しませんか?
「ただい……」

ま、と言い掛けて。

ソファに座り、俯く彼女の表情に違和感を抱く。

オレの気配にも気付かず、どこか一点を見据えてなにやらブツブツと呟くその姿に、なぜかざわりと胸が騒いだが、手にしていた鞄を下ろした物音で僅かに彼女の注意を引いたのか、ふいに顔を上げてこちらに気付いた彼女と目が合った。

驚いたその顔は三つ年上とは思えない程にあどけなく無防備で可愛くて……。
忽ちさっきまでの漠然とした嫌な感覚は霧散してゆく。
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