離婚、しませんか?
そもそも、夫に抱き竦められ唇を奪われる寸前というこの体勢からしてよろしくないのだ。
早くこの状況を打破しなければ益々よろしくないことに……!

「冗談はいいからキスしたい。させて?」

出た!雛鳥のお願い。
マヌケ顔から一転、綺羅綺羅スマイルビームが放たれた……っ!

でも、でもでもっ、させません!

早く拒まなきゃ、迫り来る唇がすぐそこに!

「冗談じゃな……っ、光(ひかる)さん待って!」
「待たない」
「いやちょっと待って!」

抵抗したくても夫の両腕がぎゅうぎゅうと巻き付いて拘束は強まる一方で、仰け反るしかない私の背中がっ、攣りそう……っ。
この体勢、本当によろしくない!

「みちる……」

やめて。
雛鳥の顔してそんな物悲しい目をしたって絆されないんだから。

「みち」
「だから待ってって、言ってるでしょう?」

絆されないったら絆されない。
間近に迫る夫をキッと睨んで、思い切り顔を背けた。
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