離婚、しませんか?
試してみようと言ったのは、夫の方でした
「なに、言ってるの?」

夫から押し寄せるぞっとするほど黒く淀んだオーラに気圧されながらも、見当違いなその言葉に呆れたように返す。

「好きな人がいるのは……、あなたの方でしょう?」

そう問えば、体を起こして今にもこちらに膝でいざり寄ろうとしていた夫がぴたりと固まる。

「どういう、意味?」

心底不思議そうなその声、その表情に、こちらが首を傾げたくなる。

「どういう、って」

それを私の口から言わせるの?
残酷だ、この人は。
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