離婚、しませんか?
「離婚だって、お互いに恋愛感情を持てなかったり、他にっ、好きな人ができたら別れるって、約束したのに……!それなのに、嫌だって言うしっ」

私を好きでもないくせに、どうしてすんなり納得してくれないの。

「みち、る……」

止まらない涙に喉を詰まらせながら訴える私の前で、琥珀色の瞳が次第に大きく見開かれてゆく。
だけどそれはすぐに細められ、夫の顔はもう、すっかり元の、と言うより、みるみる内に震え上がるほどに恐ろしい形相に変わっていた。

「……好きなヤツが、いるのか?」

それはまるで、地の底から響き渡るような禍々しい声だった。
< 48 / 126 >

この作品をシェア

pagetop