離婚、しませんか?
今夜の私は夫に気付くことなくソファに座ってあれこれと考え込んでいたせいで、『お帰りなさい』のその後のパターンなど全力拒否で話を切り出すつもりが、うっかり夫の腕から逃げ遅れてしまったのだ。

……まあ、逃げ遅れた要因はそれだけじゃなかったけれど。

夫と目が合った瞬間、慌てて立ち上がり『おかえり、なさい』とぎこちなく声を掛けてすぐに俯いてしまった私に『ただいま』と返して来た夫。

近付いて来る足音。

それからーーー。

『ふぅ、疲れた』と呟いた夫がスーツの上着を脱いでソファの背凭れにそれをふわりと掛けてから、ことさらにゆっくりと、まるで焦らすように、ネクタイの結び目にクイッと指先を入れて緩め(その仕草、やっぱり何度見ても眼福です!)、シャツのボタンを上から三つも外して吸いつきたくなるほど綺麗で滑らかな鎖骨を惜しげもなく晒した喉元を、これでもかと至近距離から見せつけてきたりしたら、もう目が離せないに決まってる!
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