離婚、しませんか?
「じゃあ、なにを言いたい訳?」
「だからっ、あ……、あの女性(ひと)のこと。あなたが、寝言で呼んでた」

聞きたくはないけれど。聞かなきゃ前に進めないから。

「『実花(みか)』の、ことだろ」

『みか』
夫がその名を口にした途端、忽ち現実味を帯びて来る彼女の存在。

嫌だ、と思った。
その名前を夫が口にするだけで。
私以外の女の人を、呼んだりしてほしくないって。

だけど。

「教えて。その人は、みかさんって、一体、誰?」

私を好きだと告げてくれた夫。

でも、きっと今でも、夫の心を占めている女性がいる。
夢に見るほど。
夢で泣けてしまうほどに。

その事実が私を踏み留めてしまうから、ちゃんと向き合わなければ。
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