離婚、しませんか?
「その翌朝だよ。あいつが亡くなったのは」
「…………翌、朝?」


じゃあ、二年前のバレンタインデーの、翌朝に、彼女はーーーーーー。


「あいつの部屋の机の上には、オレ宛のチョコを入れた手提げが置かれていたそうだ。オレに渡せないまま持ち帰ったそれを……初七日も終わった後、伯母から受け取って。開けたら、そうしたら…………」

震える唇はそれ以上言葉を紡げず、潤んだ琥珀色の瞳を揺らめかせて私を見下ろすその姿は迷子の幼子のように心許なく見えた。
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