離婚、しませんか?
「いいの……もういいから」

思わず両手を伸ばして夫を抱き寄せれば縋りつくように抱き返されて、そんな夫が愛おしくて、ただ愛おしくて。
この人の心を守ってあげたいと、強く思った。

「今はもう、これ以上話さなくていいから」

そう告げれば、俯いていた夫がゆっくりと左右に頭を振り、その顔を上げて私を見つめる。

「ごめん。もう大丈夫だから。キミには……ちゃんと話すよ」

そう言った夫の顔には、儚いほど微かな笑みが浮かんでいた。

「分かったわ。だけど、無理はしないでね」
「ありがとう」

ひとつ頷いた夫が、再び話し始める。

「その手提げの中には手作りのトリュフチョコと、手紙が添えられていた。そこには……、ちょっと待ってて」

ベッドから離れた夫は、壁際に置かれた本棚の一番下の小引き出しを開けると、なにかを手にして戻って来た。
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