シグナル

「坂田か?坂田なのか?そうだろ!」

するとようやく電話の主から返事が帰って来た。

「井上か?

済まない、助けてくれないか…」

微かに聞こえたその声は、

ひどく沈んでいた。


しかしこの時の井上は、

電話の主が武雄である事が信じられずにいた。


何故ならこれ程落ち込んだ武雄の声を、

久しく聞いたことがなかった為である。


井上は電話の声が武雄である事を確認する様にそっと尋ねる。


「本当に坂田なのか?」

「あぁ…」

「どうしたんだ?一体、

助けてくれってどういう事なんだ?」

「助けてくれ…頼む!」

「分かったから、

何があったか言ってくれないと分からないだろ!

俺に出来る事なら何でもするから言ってみろ!」

だが武雄は井上に助けを求めた事により、

それまで押し殺していた感情が一気に湧き出してしまい、

徐々に冷静さを失ってしまった為、

次第に何も言えなくなってしまった。

< 175 / 228 >

この作品をシェア

pagetop