シグナル
この時井上は思いだしていた。
彼がまだ自分の事務所を持つ前、
大手の事務所で弁護士としての道を歩みだして一年ほど経過したある日、
彼の勤める弁護士事務所に、
今回とそっくりの依頼が舞い込んできた。
その時井上は、
事務所のエースとも言うべきベテラン弁護士と共に、
その事件を担当したのだが、
その事件の時もやはり、
加害少年は精神に異常が認められたのだ。
その時の状況と今回とがダブってしまった。
そしてなにより、
学生時代から付き合ってきた友人を、
どうにかして助けたいとの思いが強く出てしまった為の言葉であった。