彼女の涙の理由
〜生死〜
「とりあえず病院に行きましょう。車の中で説明します。」

「はい。」

僕はあの時とても冷静だった。
でも、鳥肌はいつまでたってもなくならなかった。

「妹さんが帰宅途中に最近噂されていた連続通り魔に襲われました。無事通り魔は逮捕されたのですが、妹さんの左胸下を刺されたので、重症だと思われます。」

「無事なんですよね!?」

「今の所意識不明と聞いております。心肺停止ではないみたいですよ。」

僕がちゃんと言っとけばよかったんだ。
涙が止まらなかった。不安でしょうがなかった。

「まぁ落ち着いてください。もう直ぐでつきますから。」

僕は警察官に何号室か聞いた後、今までにないくらいの勢いで病室に駆け込んだ。

「文恵!!」

彼女は生きていた。彼女の体にたくさんのコードが繋がっていた。

「まだ、安静にしていないと死に至る可能性があります。それにコードも一本でも抜けば彼女の命はないでしょう。
祈ることが今は精一杯の処置ですよ。」

そう医者に伝えられた。
すぐさま手を握りそのまま寝てしまった。

「あなた達だけは死なないで…」

「飯塚さん、親父。二人は?なんでここに?」

「伝えにきたのよ。文恵をよろしく頼むわね?」

はっ!!?
今のは…夢。
最後に母さんと呼べばよかったかな。

「文恵…」

手を離さない。絶対。
この手を離したらもう2度と戻らない気がして…




だいぶ日が経った。
もう3日目か?

「………ッ」

「ん?……文恵!!!!」

「お兄ちゃん?…私?生きてる。」

「良かった!!!!」

気付くと泣きながら彼女を抱きしめていた。
力強く。

「お兄ちゃん、痛いよ」

「あぁ…ごめん。」

良かった生きていてくれて。
愛しているよ、文恵。
君を失いたくない。



家族として。
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