すれ違う未来
●彼女視点:6話


彼は私からの別れに素直に頷いた理由を
「俺とでは幸せになれない ってハッキリ言われるのが恐かったんだ」と言った。
どういうこと? 幸せになれないと言われるのが恐いって?
やっぱり、浮気する様な男だから、私が幸せになれないって意味?
・・・でも、彼の態度を見ていると、どうしても、浮気や私の代わりがすでに居る人には見えなかった。

彼を部屋へ招き入れた。
・・・軽率な行動だろうか?
でも、今 彼と話し合わなければもう二度と話しをする機会が無い様な気がした。
話し合わなければ、多分 私は一生後悔し続ける。

それに、彼から私に会いに来てくれた事実は素直に嬉しかった。
私との決別の為に来たのだと思ったけれど、そうではなく、私との別れについてきちんと知りたいと思ってくれた事が本当に嬉しかった。
・・・私達は同じ後悔を抱えていたんだ。

彼の話はすぐに信じられるものではなかった。
私との結婚を意識していた?
家事が得意?
・・・本当に?
私は彼に探る様な目を向けてしまう。
すると、彼は、
「あのさ、晩飯まだだろ?」
「え? うん」
「俺、作ろうか?」
「作ってくれるの?」
「目の前でやって見せた方が信じられるだろ?」
彼は、はにかむ様な笑顔で言った。

彼が手際良く調理を始めたので、本当に驚いた。
何処に何があるのか分からないから、私が調理器具の準備はしたけれど、他は彼が全てしてくれた。
「簡単なものだけど」
と、キャベツとベーコンのペペロンチーノがテーブルに並べられた。
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