一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
会って開口一番にそんなことを言われて、不覚にもドキッとしてしまい、ドアを開けた状態のまま固まってしまう。


「元気だった? 風邪引いたりしていない?」

「は、はい……」

あまりに普通のことを聞かれ、面食らってしまう。


すると南さんは安心したように小さく肩を落とし、家の中から匂ってくる良い香りに鼻をスンスンし始めた。

「なんかいい匂いがする」

「あ、それはたぶんお味噌汁やたまご焼きの匂いかと」

咄嗟に答えてしまうと、彼は目を輝かせた。

「もしかしてミャーが作ったの?」

「はぁ、そうですが……」

あまりに普通すぎる様子に、調子を狂わされっぱなしだ。


戸惑いながら頬を人差し指で掻いてしまうと、彼は私のとの距離を縮めてきた。そして至近距離でまるで子供のような目で言ってきた。


「食べたい! ミャーの手作り!!」

「……えっ!?」

けれどさすがにこれには、声を荒げてしまう。

だって今日の夕食メニューは余りものばかりだ。しかも和洋中お構いなしだし。
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