一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
「あっ、二週間前はお忙しい中お会いしてくださり、ありがとうございました」

なぜかここでお見合いの話を持ち出し、今さらながら頭を下げた彼に、頭の中でズコッという効果音が鳴り響いた。

どうしてこのタイミング? それって普通、我が家を訪れて最初に言うことじゃないの?


「いいえそんなっ! それはこちらの方です! こんな娘とお忙しい中お会いしてくださり、誠に!! ありがとうございました!」

南さん以上に深々と頭を下げるお父さん。

気のせいかな? さっきからお父さん、何気に私のことディスッてばかりいない?

けれどこの話の流れでは、もしかして私の思い違い? うちと契約打ち切りを言いに来たんじゃないのかな?

そんな思いがよぎる中、顔を上げた彼はやっと本題を切り出した。


「二週間もご連絡できず、申し訳ありませんでした。お見合い直後に連絡があり、仕事でトラブルが発生してしまい……。その対応に当たっておりまして、ご連絡できませんでした」

そうだったんだ、私の言動に怒っていたわけじゃないのかな?
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