俺様社長に飼われてます。
「おい、大丈夫か」
一瞬ブラックアウトした視界。瞬きをすると高山さんの整った顔が目の前にあった。
「ご、ごめんなさい……立ちくらみかな」
急に立ち上がるとたまになるそれだろう。
そう思って苦笑いをしたけど、なんだか変だ。ふわふわする。
「これ、うちの新作のルージュか?」
「よく気付きましたね」
触れるか触れないかの距離まで高山さんの指が私の唇に近づく。
出会った頃くらいに試作品としてプレゼントされたものの完成形。あの時はスティック状だったけど。
「はみ出てる」
高山さんの親指が私の唇には端をなぞる。
そのまま拭ってくれるのかと思えば、整った顔がピントが合わないくらいに近づいてきて唇に湿った感触がした。
「高山さ……?」
唇に這わされる舌に困惑して声を上げると、黙っていろと言わんばかりに高山さんの唇が私のそれを包み込むように口付けた。まるで弄ぶように、何度も角度を変えて吸い付いては離れていく。
思わず息をするのを忘れてしまい、酸素を求めるようにうっすら口を開けると待ってましたと言わんばかりにするりと侵入してくる高山さんの舌。
与えられる刺激に困惑しながら、必死に応えようと高山さんのスーツをくしゃりと掴む――と、高山さんが何かを思い立ったように唇を離した。