俺様社長に飼われてます。


「……約束、は」


小さな声でそう言うと、高山さんはすぐになんのことか理解したらしくて、困ったように眉根を寄せた。

"誕生日の夜、お前を抱く"

数日前に交わした約束を思い出して、私は恥ずかしさで更に体温を上げた。それを見かねた高山さんは私のおでこをぺしっと叩いたかと思えば、頬にキスをした。


「お前の負担になることはしたくない」


そう言われて私は肩の力を抜いて、力なくベッドに背中を預けた。

しばらく目をつむっていると、高山さんが寝室から出ていくのを気配と音で感じた。

ほどなくしてまた戻ってきたらしい。
大きな手のひらが私の頭を撫でるようにして前髪をかき上げる。ぺたり、と濡れたハンカチがおでこに乗せられる感覚に反応してうっすらと目を開けた。


「高山さん」

「何だ」


薬や水、軽食としてゼリーを持って来てくれたらしい高山さん。看病してくれるみたいだ。


「大好き」


熱に浮かされたその言葉に返事はなくて、しばらくの沈黙のあと「寝ろ」とぶっきらぼうな優しい声が掛けられた。


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