俺様社長に飼われてます。
「篠原クン、彼氏とかは?」
「えっ……」
思ってもみなかった質問に動揺したのは私だけではなく、少し離れた場所にいた柳谷さんも同じだった。
カシャン、と化粧品が床にばら蒔かれる音が鳴り響く。
「彼氏とか好きな人とかいるならさ、その人に触れられてるのを想像して撮ってみるといいよ。んじゃあ、明日もよろしくね」
言葉に詰まっていると、先ほどの問いかけに返答は求めていなかったらしくプロデューサーは淡々とそう言って荷物をまとめ始めた。
好きな人に、触れられる……。
悶々と考えながら帰路について、玄関で靴を脱ごうとして上手く脱げず――なぜだか涙が溢れた。
高山さんが、高山さんの会社の人達が一生懸命作った商品の魅力を私は引き出せない。それが何が原因なのかもわからないし、私には想像もつかない。
好きな人に触れられて、それで大人の恋がわかるの?