叫べ、叫べ、大きく叫べ!

――少し今日を遡る。


朝、家を出て歩くと十字路に人影が見えたところから始まった。


ブロック塀に背を預けた(都波)は、遠くから見ても雰囲気があって、そんな彼を見たら誰もが心を奪われてしまうんじゃないかって思うほど、様になっている。


その余裕さが癪に障る。


だから見てないふりをしてそのまま通り過ぎようとしたけど容易く捕まってしまい、一緒に登校し、まだ誰もいない教室で2人きりになり……。


都波はつくづく恐ろしい人だと思った。


会話の途中にサラッと『好きだよ夏澄ちゃん』なんて言ってくるし、私の反応を明らかに楽しんでいて、私が外を見ていると真似したり、視界に侵入してきたり……。


そして、タイミング悪く何度目かの『好き』をクラスの1人に聞かれて……――今に至るわけなんだけど。


人って本当情報共有伝達の速さが素早いよね……。てか好きだよね噂話とかさ。


1度ぐらいは疑ったりしないのかな。してください。
私は一方的に好意を抱かれているだけで、都波のこと好きでもなんでもないんだから。むしろ嫌い。ううん、元から苦手人物なんです。


なのに、私は何も言えないまま、話はどんどん広がって。
今じゃ都波の“彼女”になってるみたいじゃん。


これは授業中に届いたLINEでの話だけどね。



【俺たちいま付き合ってることになってるらしいよ!"(ノ*>∀<)ノ】


スマホ投げたくなったのは言うまでもない。

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