叫べ、叫べ、大きく叫べ!
ギュッと閉じていた瞼がその反動で少し緩んでぼんやりと視界が開く。
慣れてきた先には有り得ない光景があった。
「ぇ、」
吐息混じりの声は酷く掠れ、瞬きを2、3回繰り返すばかり。
視界いっぱいに映る白い塊。
だけど、それはちゃんとした人間の寝顔。
切れ長の目に、長いまつ毛。
鼻筋もしっかりしていて、少し口元が緩んでいるその人は、どこか子どもっぽくてなんだか癒される。
……ってそうじゃなくて!
なんであなたがここに!?
何しに来たの!?
気持ちよさげに寝ている人は、以前屋上で出会ったちょっと怖い雰囲気の不思議な男子だった。
な、何してるのここで。
しかも身体!身体が薄いんですけど!
ふと私の腰元を見た。
そこにある白い手はしっかりとこの人の身体と繋がっていて、言葉を失った。
口元に手を添えた私は勢いよく起き上がり彼から距離を開ける。
ゴチンと頭を壁にぶつけながら痛みに耐えつつ彼を信じられない思いで見つめた。
だ、だって。
あのシルエットもこの手もこの人だったと思うと……っ。
え、なに、怖い。何しに来たの本当……。
知らぬ間に息を止めていたみたいでおもむろに呼吸をしだすと、ついに彼が動いた。