叫べ、叫べ、大きく叫べ!

何も音はしなかった。

ただ彼はほんの少しうつ伏せ状態になっただけで、何も。


私が彼から離れた時はサラサラとベッドの衣擦れがあった……はずなのに……。


もしかして、本当はこの人死んでるの?
でも屋上で話した時はちゃんと影があったし……。
別人なのかな。



「……んー……」


突然の寝ぼけた声にビクリと身構える。


布生地に頬をスリスリしているけれどその音は無くて、この世の者ではないのかなと心に思う。


そしてうっかりその様子に『かわいい』なんて思ってしまったことに勝手に身体が熱くなる。
でも、本当に可愛く見えてしまったのだから否めない。


たまたま視界に入った時計は2時……22分だということを確認して『まだ全然寝れるじゃん』と心に呟いた。


でもどうしよう。身体が薄いからといってその上に寝るなんてことはさすがに出来ないし、失礼だよね。


姿勢を正した私は正座をして彼に顔を少し寄せてみた。



「ねえ、ちょっと、すみません」


試しに喋りかけてみた。


さっき動いたのだからほんの少しは意識があるんじゃないかと思って。



「すみませーん」


もう眠気なんて吹っ飛んでしまったけれど、やっぱ疲れはまだ消化されていなくて横にはなりたいその一心で気持ちよさそうに寝ているその顔にしつこいくらいに語りかけていると。


うっすらと瞼が開いた。

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