あの日を





『……良い?よく聞きなさい。あんた、電話をかけてくるのもう5回目よ。』







「…………へ?」







『……あなたの彼は、2週間前に亡くなったの。早番で出て行った朝、電車のホームに飛び降りて、自ら命を絶ったのよ。遺言も見つかった。』






「……嘘よ。彼がそんなことするはずない……。だって、彼はあの朝私の頭をいとおしそうに撫でて……」








そこまで言ってようやく気がつく。



私は今、自分であの朝と表現した。


彼はあの朝……いとおしそうに私の頭を撫でて……










『元気で。』











ポタポタと涙が溢れてくる。






彼は帰ってこない。


もう二度と……。

帰ってくることはない。




それを分かっている筈なのに……私は毎日あの日を繰り返す。


そうしていれば、彼が戻ってくるのではないかと思って……何度も何度も繰り返す。




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