あの日を
あまりの衝撃に、私は思わず声を出していた。
開いた口が塞がらないとはまさにこの状況を言うのだろう。
とにかく訳が分からないまま、私は母親に電話をかけていた。
『……もしもし。』
「──あ、もしもしお母さんっ!?ねぇ、大変なの!!彼が帰ってこないのっ!!早番で出ていった筈なのに、今の時間になっても帰ってこないのよっ!?」
『ちょっと落ち着きなさい。』
「それにね、携帯電話も繋がらないのっ!!おかけになった電話は現在使われておりませんって……!!きっと彼に何かあったに違いないわ!!」
『ねぇ、お母さんの話聞いてる?』
「どうしたら良いと思う!?警察に連絡した方が……いや、まずは会社まで行ってみた方が良いの──」
『──しっかりしなさいっ!!!!』
母親の怒鳴り声で、私はようやく母の言葉を聞き取ることができた。
私が黙ったところで、母はゆっくりと話し始める。
『……良い?よく聞きなさい。あんた、電話をかけてくるのもう5回目よ。』
「…………へ?」