国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
翌日、アローラに付き添われて祖母に会いに行った。

ユリウスは朝から忙しく時間が取れなかったのだ。アローラは一時間後に迎えに来ると言って、帰って行った。
 
ルチアは扉を開けた。

「おばあちゃん!」
 
祖母は部屋の中央にある椅子に座っていた。ルチアの姿を見ると、立ち上がった。
 
ルチアは祖母に抱きついた。

「ルチア、無事でよかった」

「おばあちゃんは大丈夫なの? まだどこか痛いんじゃない?」
 
頭と足に包帯をしている自分と違い、祖母はなにもないが顔色が悪く見えて、ルチアの顔が瞬く間に心配そうになる。

「いいや、お前のおかげで怪我は軽くすんだよ。ルチアのほうが痛々しい」
 
ルチアは頭の包帯を指さしてにっこり笑う。

「もうほとんど痛くないの」
 
3人掛けのソファに並んで座り、祖母はルチアを眩しそうに見つめてから口を開く。

「お前には本当に申し訳ないことをしてしまったよ。まだ姫だと決定していないんだろう?」

「わたしは姫じゃなくていいの」
 
祖母を心配するあまり、強がりを言う。

「そんなことを思ってはいけない。間違いは正さなければ。お前が王家の血を引いているんだ」

「でもエラは自分が姫じゃないかもしれないって、知らないんでしょ? とても今を楽しんでいるのに……」

「すべてはわたしのせいだが、そんな同情はいらないよ。エラの両親はぬけぬけと国王の前で嘘をついたんだからね」
 
ユリウスから話を聞いた祖母はエラの両親に憤慨していた。

「おばあちゃん……」
 
ルチアは困っていた。

ユリウスの近くにいたいという気持ちが日に日に増してきているのだから。


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