国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
島で断ったときも苦しかったが、今彼の元を去ることを考えると胸が痛くなった。

「わたしは数日、街の宿屋にいる。どうにかしてエラの両親の考えを変えてもらわなければ」

「おばあちゃん、無理しないで」

「いいや。お前のおかげで息子夫婦が亡くなった後も、楽しく暮らせたんだ。こんなにいい子なのに、わたしがお前の人生を狂わせたんだよ。やれるだけのことはやらせておくれ。国王はお前を愛している。どうにか一緒にさせてやりたいんだ」
 
頑固な祖母はやると言ったら、ルチアが止めてもきかない。
 
ルチアは困り果てながら、たくさんの皺のある顔の祖母を見つめた。

祖母は2日後、城を出て行き、島の家が出来上がるまで街の宿を仮住まいにした。
 
出発までルチアは祖母と一緒にお茶をしていた。
 
宿に遊びに行くと約束して、ルチアは祖母と別れた。

自分が姫ではなかったら、島に戻るのだ。別れはほんの少しの間かもしれない。だからそんなに悲しくなかった。
 
アローラの付き添いでルチアは城門まで祖母を見送り、部屋に戻ってからすぐ、エラが酷い剣幕でやって来た。

「ひどいわ! ルチア!」
 
エラは顔を真っ赤にさせて泣いていた。

「エラ、いったいどうしたの!?」
 
以前から泣き虫だったが、こんなに号泣しているエラは初めてだ。

しかもルチアのせいだと言われ、当惑をする。

「ユリウスさまから結婚を延期しようって言われたのよ! わたしが姫じゃないかもしれないだなんて信じられないっ!」

「エラ、落ち着いて」
 
ルチアは興奮気味のエラを椅子に座らそうと腕に触れた。その手がパシッと叩かれる。

「ルチアが姫かもしれないだなんて!」

部屋に控えていたアローラは昨日、ユリウスからルチアが本当の姫かもしれないと知らされていた。

驚くばかりだが、アローラ自身姫かもしれないふたりを目の前にして困惑していた。


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