国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
城の正面玄関に二頭立ての馬車が用意されていた。

「ルチア、乗って」

「エラ、怖いわ」
 
ルチアは馬を見て、顔を引きつらせて首を横に振る。

「なにが怖いの? 馬? それなら大丈夫よ。中へ入ってしまえば馬なんて見えないもの」
 
エラはルチアの腕を引っ張って、乗り込ませようとする。

「でも、アローラさんに言ったほうがいいんじゃない?」

「大丈夫よ。わたしの侍女に伝えてもらうように言ってあるから。それよりルチアと出かけられるなんてすごくうれしいの。早く行きましょう。わたしがお金持っているから心配しなくて大丈夫よ」
 
エラは強引に言って、ルチアを馬車に乗せた。
 
城にかかる橋を通り、緑が多い道を走ると、街が見えてきた。

ルチアは馬車に乗るのが初めてで、窓から顔を出して景色を見ていた。
 
意外と速度のあり、長い髪の毛が風になびかないように片方の手で抑えながら。
 
街に入ると、舗装されていない土の道から石畳に変わり、馬車の速度もゆっくりになる。
 
馬車は市場手前の広場で静かに停まった。
 
市場の道は狭く、馬車が行けるのはここまでのようだ。

馬車から下りると、ここで待つようにエラは従者に言う。

「行きましょう」
 
エラは長い黄色のドレスを引きずらないよう、少し持ち上げて歩き始める。

ルチアも着ているのは地面すれすれのドレスだ。ウエストから広がっているスカート部分が市場では邪魔になるだろう。
 
賑わう市場をルチアはエラと共に歩く。

黙って出て来てしまったことに罪悪感はあるが、見たこともない精肉店や野菜を店頭に並べているお店などがあって楽しい気持ちが浮上してくる。

前に来たときはユリウスの噂に驚いて、じっくり見ていられなくなったのでルチアは色々なものに興味を持った。

歩いていると、彩りが綺麗で美味しそうなお菓子の店もある。
 
前にジョシュと来た搾りたての牛乳が売っている店もあった。


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