国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
花が咲いている美しい庭をふたりが散歩していると、エラがひとりでやってきた。

昨日とは違い、表情が柔らかく見える。

「ルチア、昨日はごめんなさい。ひどいことを言ってしまったわ。また前のように仲よく過ごしたいわ」
 
エラの潤んだ瞳を見て、ルチアはにっこり微笑む。

「突然のことでびっくりしたんでしょう? わたしなら大丈夫よ」

「ルチアはいつも優しいのね」

「ずっと一緒にいたんだもの。当然よ」
 
ルチアとエラは抱き合った。

「包帯取れたのね?」
 
今朝ようやく医師に大丈夫だと太鼓判を押され、頭の包帯が外されたのだ。左足の包帯と共に。身軽になったようでルチアは嬉しい。

「アローラ、わたしたちはあそこでお茶をしたいの。用意してもらっていいかしら?」
 
エラは命令するのが堂に入って、アローラに言った。

「わかりました。すぐに用意いたします。こちらでお待ちください」
 
アローラは城へ消えて行った。

「お茶ならここじゃなくても……」

「だって、アローラったらきついし、怖いし、一緒にいたくないのよね。ね、ルチア、市場へ行ってみない?」

「市場っ!?」
 
先日、すぐに帰ることになってしまったが、楽しかった場所だ。

「市場まで馬車ですぐだし、治安がいいからわたしたちだけで歩いても怖くないのよ。ねっ? 行きましょうよ!」
 
エラはルチアの手を引いて歩き始めた。

「えっ? 今なの? アローラさんにお茶を頼んでいるのにっ」

「いいのよ。放っておけば。行きましょ。ルチアが行かなくても、わたしひとりで行くわ。わたしになにかあったらルチアのせいよ」
 
ルチアは戸惑うものの、エラをひとりでは行かせられない。後ろ髪を引かれつつ、ルチアはエラについて行った。

(エラは結婚が延期になってしまったから気晴らしをしたいのかもしれない……)


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