国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
ルチアはバレージ子爵の話を祖母にできなかった。

話せば心配をかけてしまうだろう。

祖母はあの帆船に乗っている男たちが、ここに住んでいる若い女たちを好きなようにしてしまう……そんな恐ろしい考えを持っていたからだ。

どうしてあの男が明朝、来るように言ったのかわからない。

ルチアはその夜、これからの住人の生活と、自分が明日どうなるのかを考えるとなかなか寝つけなかった。

寝返りを何度も打てば小屋がミシリときしみ、寝つきの悪い祖母に迷惑をかけてしまう。

そう思うと、身体が金縛りにでもあったかのように動かせなくなった。

ジョシュは明日一日休ませれば、体調は回復するだろうと祖母は言っていた。

しかし、また過酷な潜りに入ればまた身体を壊すことは目に見えている。

それは一緒に潜る住人すべてに言えることだった。


眠ったのはほんの二時間ほど。

ルチアは静かな水平線に太陽がほんの少し顔を出し始めると寝床から抜け出した。

これからあの男のいる帆船に行かなくてはならないことを考え、シャツと長めのスカートを身に着ける。

母親の物だ。ルチアの母はいつもこのような格好をしていた。

ふたりを起こさないように、ジョジュに飲ます煎じ薬を外で作ろうと、小さな鍋を持って出入り口の布を押し上げた。

「ルチア……」

小さな声のジョジュに呼ばれルチアは布を上げたまま振り返る。

ジョシュの瞳はいつものような精気に満ち溢れたものではない。

どこかぼんやりした表情だ。

「おはよう。具合はどう? 今、薬草を煎じてくるね」

「悪いな……」

申し訳なさそうなジョシュに微笑んでルチアは外へ出た。

島の人々が共同で使用する料理場にやってきたルチアは雨水の溜まったカメから持っていた鍋に水を汲み、火種を復活させ温め始めた。

木の手すりに腕をもたせ、ゆっくりと登る太陽を眺めていると背後で足音がした。

「ルチア、おはよう」

小さな声が聞こえる。エラだ。エラも小さな鍋を持っている。

「おはよう、エラ。おじさんの具合はどう?」

エラは浮かない顔になって、首を横に振る。


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