国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
王弟一家が海で亡くなる前、それがいつだったかは覚えていないが、王弟妃とエレオノーラが中庭で肖像画を描いてもらっていた。

ユリウスはふたりを描くひげをたくわえた年配の男性の横でエレオノーラを見守っていた。

『王子さま、あと少しで姫さまと遊べますよ』
 
絵描きの男性はユリウスに真面目な顔をして言う。
 
エレオノーラを見れば、飽きた様子で繋いだ母君の手をブラブラさせている。

『最後にこの色で、ここに……何事も忠実にですよ。王子さま』
 
絵描き人は母君の手を繋ぐエレオノーラの腕の内側に赤いほくろを付けた。
 
そこまで思い出したユリウスはもう一度、ぐっすり眠るルチアの腕の内側を見つめた。

「……エレオノーラ」
 
ユリウスはすぐにでもルチアを起こし、その話をしたかったが、はやる気持ちを抑え、頭を枕につけた。

「あの絵は……宝物庫に……?」
 
絵が見つかればルチアはエレオノーラだと証明される。

「絶対に見つかる」
 
一筋の光を見出したのだ。
 
興奮冷めやらぬユリウスだが、ルチアの身体を抱き寄せると、目を閉じた。


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