国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
ラウニオン国の領海域、エメラルドグリーンの輝く海にぽっかり浮かんだ島があり、そこで生活する人々がいた。

島で生活する彼らは、街で暮らす人よりも潜水時間が長い。

彼らは文明に劣っているわけではなく、漁で捕った魚を首都ラーヴァへ行っては売り、服や嗜好品なども手に入れている。

そこに住む彼らは50人余り。

この生活が好きな者もいれば、成人するとこの島を出て、街に住む者もいた。

スラリとした肢体、小麦色の肌、淡い絹糸のような長いブロンドをなびかせていた娘が、急ぎ足で小屋に入っていく。

「おばあちゃん!」

部屋の片隅で魚の鱗取りをしていた老婆にその娘は駆け寄る。

ドスンと老婆の側に座ると、簡素な小屋がぐらりと揺れた。

「ルチア、何度言ったらわかるんだい? 静かに座れと言っているだろうに」

「おばあちゃん! それどころじゃないわ! どうして漁に出てはいけないの?」

先ほど男たちと一緒に海に潜ろうとすると、長老に止められたのだ。

祖母は鱗取りをする手を止めて、ルチアを見た。

生成りの生地は身体の最小限しか隠されておらず、膨らんだ胸の膨らみや小麦色の腕や長い脚が見えている。

祖母はその姿に目を細めてから、少しおいて口を開いた。

「初潮があっただろう? お前はもう女になったんだよ。海の神さまは女を嫌う。女が海に入ると魚が取れなくなるのさ。何度も言ってあるだろう?」

「あ……」

ルチアはどうしてなのか思い出した。

「もうお前は一人前の女だ。身体を露出する服はよくない。長いスカートとブラウスを着なさい。近いうちにジョシュと婚姻の話があるだろう」

「ジョシュっ!?」

ジョシュは18才のルチアと同じ年で、この一族の中ではまあまあの男前だ。

お互いの両親が海で亡くなってから、ルチアの祖母に育てられ兄妹同然に過ごしてきた。そのせいか、ジョシュに対して全く恋心は沸かない。

< 4 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop