国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
ユリウスはずっとルチアを待っていた。

一晩明けて、彼女がやって来ることを思うと気持ちが浮上するのだ。しかし、ルチアは暗くなっても来ない。
 
甲板横の室内のソファに座ったユリウスはテーブルを指先でコンコンと打っている。
 
どうして来ないのだろうかと、苛立ちを抑えられない。女性に対してこんな風に思うのは初めてだった。
 
ユリウスのエメラルドグリーンの瞳はルチアが持って行かなかった瓶に入った栄養剤を見ている。
 
そこへジラルドがやって来た。

「またその栄養剤を見られているんですね」

「どうしてルチアは来ない? 平気で約束を破る娘なのか? それとも具合が悪いのだろうか?」

ユリウスは甲板の方へ視線を動かす。

「バレージによりますと、責任感のある娘のようなので、後者かと思われますね。島の娘がこのような場所に入れる機会を逃すとは思いませんし」

「ジラルド、それは聞き捨てならないぞ。これさえも持って行かなかった彼女は強欲な人物ではないと信じている。昨晩彼女は体調が悪かった。それよりもどうしてあのような華奢な娘を潜らせたんだ?」
 
許したバレージに怒りがこみ上げるユリウスだ。
 
ルチアをかばうユリウスにジラルドは顔を顰める。

ユリウスは今まで大臣らに勧められて会った娘たちにこのような興味を抱かなかった。
 
ジラルドが考えていると、ユリウスは立ち上がり颯爽とした足取りで甲板に出た。
 
ユリウスは島の方を見ている。

小さな島に点々と灯りがあり、それは島に住むものの家だ。
 
ルチアの家はどの辺なのだろうかと、暗闇の中で考えにふけった。


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