国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「アローラさん、でも……」

「お薬を飲んで寝てください。のちほどアドリアーノさまがおやすみのご挨拶に来られます。エラさん、ご両親がお待ちです」
 
アローラは丁寧に言うと、扉を押さえてエラを促す。

「ルチア、今日はダメみたいだね」

「エラ……明日には帰るから」
 
ルチアはがっかりしてもう一度ベッドに腰を下ろした。

エラとアローラが部屋からいなくなると、ルチアは小さくため息を漏らす。
 
島育ちで室内にずっと落ち着くことがないせいか、動けるようになればここでの生活は窮屈に感じられる。
 
ルチアは立ち上がると、対面にある小さな窓に近づき真っ暗な外を見る。

外で星空を眺めたくなったが、勝手に動くほど非常識ではないつもりだ。ルチアはしばらくひとり掛けの豪華なソファに座り、窓の外の暗闇を見つめていた。

「ルチア」
 
名前を呼ばれてハッと振り返る。ユリウスが立っていた。

彼が入って来たのも気づかないくらい、ぼんやりと暗闇を見ていたようだ。

「アドリアーノさま……」

「寝ていなければダメだろう?」
 
ユリウスはルチアを手を取り立たせると、大事なものを運ぶかの如く、ルチアをベッドに連れて行く。

「もう大丈夫です。明日、帰ります」

「明日、医師に診てもらおう。大丈夫であれば帰っていい」

「ありがとうございます」
 
ベッドに腰をかけているルチアは立っているユリウスを仰ぎ見て微笑む。

「ルチア……」
 
ユリウスは長い指をルチアの頬に滑らせる。



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