国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「君がエレオノーラだったらよかったのに……」

「エレオノーラ……?」
 
ルチアは頬を撫でる指を意識しないようにして尋ねる。彼に触れられるのは心が安らかになる感覚になる。 

「いや、なんでもない。薬は飲んだかい? 横になって」
 
ルチアは言われるまま、ベッドに身体を横たえる。

「少し君を抱いていていいだろうか?」

「えっ?」
 
なぜかルチアを見るユリウスの顔がつらそうで、コクッと頷いていた。
 
ユリウスは上掛けの上に身体を横たえると、ルチアの長い髪に気をつけながら腕を頭の下に差し入れた。
 
男性とこんなに密接するのは初めてで、同じ部屋で寝ているジョシュとでさえない。途端に、ルチアの心臓が暴れはじめる。

「近すぎて……心臓の音が聞こえませんか……?」
 
なにか話していないと、力強い腕や、ユリウスの美麗な顔を意識してしまう。

「そこまで密着していないからわからないな。それとももっとくっついてほしい?」
 
少しイジワルな眼差しを向けられて、ルチアは顔を真っ赤にさせる。

「き、聞こえないんなら、いいんです」
 
ルチアはユリウスの腕の中で身を硬くした。

「もっとリラックスしなければ疲れるよ?」

「そんな……リラックスなんて無理です……」
 
顔と顔がとても近く、ユリウスの顔の細部まではっきりわかる。

「なんて可愛い唇なのだろう……」
 
ユリウスの指先がそっとルチアの唇をなぞる。男女のことをまったくわからないルチアは、身体が疼くような感覚に襲われている。

(なんだろう……この人のそばにいると安心して、もっと抱きしめてほしくなる)

「宝石のような瞳で見つめられたら、この唇を奪わずにはいられない」
 
ユリウスを見つめていたルチアは、彼が上半身を腕で支えて身体を起こすのを見て、行ってしまうのかと思った。


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