国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
しばらくしてふたりは帆船まで戻った。

バレージの帆船はすでに出航した後で、ユリウスの帆船だけになっていた。

ユリウスが見張りの近衛兵にバスケットを預けていると、その横で驚くことにルチアは綺麗な弧を描いて海へ飛び込んだ。

「ルチア!」
 
ルチアはすぐに海面に顔を出してユリウスに手を振る。

「友達を探してきます!」
 
それだけ言うと、ルチアは自由に泳ぎ出す。
 
ユリウスは小さくため息を吐いて、帆船から少し離れた場所に立ち、ルチアを見守った。
 
すぐにルチアはイルカの友達を連れてユリウスの足元に現れた。
 
イルカと一緒に顔を出しているルチアは本当に人魚のようだ。
 
イルカはユリウスを見て、まるで笑っているような声を出す。

「ユリウスが気に入ったみたい。一緒に泳ごうって言ってるわ」
 
ユリウスはその場で靴を脱ぐと、ルチアとイルカを超えて海に飛び込んだ。イルカは嬉しそうにユリウスの周りを泳ぎ回る。

ルチアはユリウスの左手を掴むと、泳ぎ始める。ルチアほど泳ぎが達者ではないユリウスは早くも呼吸が苦しくなってきている。

それがわかったルチアはユリウスを海面に引っ張った。

「っ……はぁ……」
 
海面に顔を出したユリウスは大きく呼吸を繰り返す。

「大丈夫ですか?」

「君はすごいな。まるで魚のように自由に泳げる」

「小さい頃から泳いでいるから。戻りましょう」

自分のように泳げないユリウスを疲れさせないよう、ルチアは岸に上がりやすい場所へユリウスを案内する。
 
ふたりは桟橋から少し離れた岩に上がった。ルチアは長い髪を片方に流して海水を絞る。

ユリウスはイルカと一緒に泳ぐのは初めての経験だった。

「ルチア、楽しかったよ」
 
ユリウスは少年のような屈託のない笑顔になるが、髪を絞っているルチアを見て顔を顰める。


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