国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
狭い階段を上り甲板に出ると、昨日と違う空色のドレスシャツを着たユリウスが奥からやってきた。

「ルチア、遅かったじゃないか。わたしの方から行こうと思っていたところだよ」

「おはようございます」
 
バレージやジラルドに言われたせいか、ぎこちなくなって挨拶しか言葉に出来ない。

「もしかして具合が悪いのかい? 熱がぶり返さないとも限らない」
 
ユリウスはつかつかとルチアに近づき、おでこに手を当てた。

「あっ、いいえ――」

「熱はないようだ」

「はい。もう元気です。あ、これアローラさんから借りた服なのですが」
 
ルチアはアローラの姿を探して、甲板奥の部屋に視線を向ける。

「ジラルド、アローラに渡しておいてくれ」
 
すぐ近くにいるジラルドにユリウスは指示すると、ルチアから服を受け取り中へ消えた。

「ルチア、昼食を持って昨日の洞窟へ行こう。あの景色を眺めながら食べればきっとより美味しいだろう」

「はい。きっとおいしいと思います」
 
ジラルドがすぐに籐で編んだバスケットを持ってやって来た。


 
ルチアとユリウスは昨日の洞窟の前で海を眺め、たわいのない話をしていた。

「午後はわたしの友達に会ってくださいね」
 
ルチアは島では食べられない美味しいサンドイッチを頬張っている。

「友達?」

「イルカの友達です」
 
ルチアは隣に座るユリウスをにっこり笑う。

「熱が下がったばかりなのに、心配だな」

「もう大丈夫です。きっと友達も私を心配していると思います」
 
毎日のように海で一緒に泳いでおり、ここ数日は会えていない。きっと待っているはずだと思っている。

「わかった。ぜひルチアの友達を紹介してもらおう」
 
ルチアの顔がさらなるうれしさでほころんだ。


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