国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
外はビュービューと風の音が怖いほどで、ルチアはしだいに不安になってくる。

しばらくすると、今までこんなに荒れた雨を経験したことがないほどの嵐になった。

空がピカッと光り、ドーンと耳をつんざくような音がする。こんなに荒れていては、島民は家から出られない。いや、出たとしてもどこへも非難する場所がないのだ。

「このままでいくと、小屋がもたないかもしれない……」

「そんな!」
 
屋根が吹き飛ばされるのももうすぐかもしれないと、祖母は天井を見る。

アマンダは若い頃、これくらいひどい嵐を経験したことがある。あのときは島の家という家が吹き飛ばされ、死者も出た。
 
この嵐はそれ以上の規模かも知れない。
 
祖母は不安そうに隙間から外を覗くルチアの背中を見つめた。島民全員が命の危険にさらされている。
 
こんなことなら……と、祖母は今後悔していた。自分のわがままでルチアを不幸にしてしまったことに神さまが怒っているのだ。これは天罰だ。

「ルチア……可愛いルチア……」
 
祖母は小さく呟いた。嵐の音が大きすぎて、ルチアの耳に祖母の声は届かない。
 
ふとルチアが振り返ると、祖母は床の板をはがしていた。

「おばあちゃん、なにをしているの?」
 
板をはがした祖母の手に、手のひら大の大きさの箱があった。

「その箱は……?」
 
この嵐をどうやり過ごせばいいのか焦っているルチアは、箱を持った祖母にキョトンとした顔になる。

「ルチア、お前に言わなければならないことがある。わたしを許しておくれ……」

「おばあちゃん、なにを言ってるの……? きゃっ!」
 
荒れ狂った暴風に小屋が大きく揺れ、ルチアは身を縮こまらせる。
 
祖母は箱を開けて大きなサファイアのペンダントを取り出した。

「お前が浜で打ち上げられたとき、これを身につけていたんだ」

「意味が……」

ルチアはサファイアのペンダントと祖母を交互に見る。

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