偽りの副会長に恋をした
【梓side】

_ガチャ

「ただいま」

少し暗くして、テレビの音が響くリビングには父がいた。

「お帰り。手を洗ったら、母さんにも挨拶しなさい」

「はい」

うちの母親は在宅業で、部屋から出てくる事はない。勝手に部屋に入ると怒るから、いつもドア越しに話す。

_コンコン

「母さん、ただいま」

「お帰りなさい」

会話はたったこれだけ

小学校に入学するぐらいから、母と会う事が減っていった

その為、母親の顔をあまり覚えていない。写真もそんなに撮っていなかった。撮れていても、ほとんどブレているから見ることも出来ない。まぁ、今更な事だからあまり気にしてない。

母に挨拶した後、一度自分の部屋に行き部屋着に着替えた。

リビングに戻り、父と二人で夕食を食べる。

「学校はどうだった?」

「普通…かな。勉強もついていけてるから」

「そうか、あまり無理はするなよ。体を壊したら元も子もないからな」

「はい」

話す内容に変化はない。ほぼ毎日、同じような会話をしている。

「ごちそうさま。私、部屋で勉強してるから何かあったら呼んでね」

「勉強も程々にな。人間っていうのは、『すぐに忘れてしまう』生き物だ。予習も大事だが、復習を忘れるなよ。復習してみると、意外と解けない問題があるかもしれないぞ?」

「うん。気をつける」







< 21 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop