銀色の月は太陽の隣で笑う
「……なんで?」
ならばますます、なぜルウンがここに居るのかが分からない。
ここは元よりルウンの家であるため、どこにいようと自由ではあるのだが、それにしたってこれは――――。
しばらく考えを巡らせながらルウンを眺めてみるが、答えはちっとも分からないし、眠っている本人を叩き起こして聞くわけにもいかない。
「そういえば……前に旅の途中で出会った行商人の飼い犬が、最初は敵意むき出しでバウバウ吠えていたのに、気がついたら寝床に潜り込んできて一緒に寝ていた、なんてこともあったな……」
旅の途中で出会った者同士、妙に気があって野宿での一泊を共にした時の事が、不意に頭の中に蘇る。
その時の犬は、子供ならば背中に乗れてしまいそうなくらいに体が大きくて、毛足も長かったので、くっついているとほかほかと体が温かかった。
「元気にしているかな……あのおじさんも、犬くんも」
当時を懐かしむように呟いて、それから再びルウンに意識を戻したトーマは、しばらく考えた末にそっとベッドから下りる。
「ごめんね」
小さく断りを入れてから、眠っているルウンの体を抱き上げると、そっとベッドに横たえる。