銀色の月は太陽の隣で笑う
そのまましばらく様子を伺ったが、気持ちよさそうに目を閉じるルウンに変化はない。
サラリと流れて顔にかかった髪を払おうと手を伸ばしたトーマは、しかし直前で動きを止めて手を引いた。
気がつけば、窓から差し込んでいた月明かりは次第に薄くなってフツっと消え、部屋の中が再び暗闇に支配されている。
遠くの方で、ゴロゴロと空が鳴っていた。
「また、一雨くるかな……」
窓の向こうを見つめてポツリと呟いたトーマは、もう一度ルウンの様子を伺ってから、立ち上がって部屋の奥にある机に向かう。
その際、ルウンが枕元に移動させておいたバッグと、ペンが挟まったノートも一緒に持っていく。
椅子に腰掛けてベッドの方を振り返ると、そこに眠る少女の姿に、トーマの口から思わずため息が零れ落ちた。
「ルンは、男ってのがどういう生き物なのか、全く分かってない」
その無防備さでよくも今まで無事にいられたものだと、トーマはまた一つ息を吐く。
「まあ……僕が言えたことじゃないか」
下心も悪意も微塵もなかったが、無遠慮に何度も触ってしまったのは事実。
過去の自分の行動を色々と思い起こしながら、トーマは自嘲気味に笑った。