銀色の月は太陽の隣で笑う


「これでもいけるかな……」


たっぷりのハチミツの中で揺れる薄切りのレモンを眺めながら、トーマはポツリと呟いた。

頭の中には、かつて旅の途中で出会った、流れの料理人だと自称する若い男の姿が浮かぶ。

その時不意に、後ろでカタンと微かな音がした。

途端に過去から現在へと戻ってきたトーマが振り返ると、いたずらを見つけられた子供のように、ビクッと肩を揺らして縮こまるルウンの姿が目に映る。


「ルン……!」


驚いて名前を呼んだ声が咎められているように聞こえたのか、ルウンの肩がまたビクッと揺れた。


「ご、めん、なさい……。気になった、から。ちょっとだけ……見たら、またすぐ戻ろうって。あの、だから……」


ゴニョゴニョと尻すぼみに小さくなるルウンの声と、それに比例するように体を縮こめる姿に、トーマは驚いたとは言え大きな声を出してしまったことを悔やんだ。


「ちょっとビックリしただけだから。全然、怒ってないよ」

「ごめん、なさい……」
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