銀色の月は太陽の隣で笑う
12 探しもの、それは贈りもの

会話のない食事風景なんて、二人にはさして珍しくもない。けれど今日の朝食の席は、和やかな沈黙とは程遠い静けさに包まれていた。

もそもそとパンを食べるルウンと、視線を器に落としてスープを飲んでいるトーマの視線は、食事が始まってからこの方一度も交わっていない。

時折ルウンは窺うように顔を上げるが、トーマの方がどこか心ここにあらずと言った様子でぼんやりとしている。

例え会話はなくとも、今まではそこに穏やかな空気が確かに流れていたのに、だから安心していられたのに、今日はそれがないから、ルウンの心は妙にざわざわした。

何か言わなければ、なんでもいいから、他愛ないことでいいから会話をしなければと、常にはない焦りが生まれる。

それでも、元々自分から会話をするようなたちでないルウンには、会話の糸口が見つけられない。

そうこうしているうちに、スープを綺麗に飲み干したトーマが食器を重ねて立ち上がった。


「今日も美味しかったよ。ありがとう」


お礼は確かにルウンに向いているのに、心はやはりここにない。それが、どうしようもなくルウンを不安にさせる。
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