銀色の月は太陽の隣で笑う
「やっぱり、嫌かな……?そりゃそうだよね。昨日あったばかりの男に、突然馴れ馴れしい呼び方をされたら、そりゃあ嫌に決まって――」
トーマの言葉を遮るようにして、ルウンは慌てて首を横に振る。
決して嫌だったから黙っていたわけではない、ただ初めての響きに、少し戸惑ってしまっただけだった。
首を振っただけではまだ不安そうなトーマに、ルウンは小さな声で「嫌、じゃない……」と返す。
それでようやく、トーマの顔に安心したような笑みが広がった。
「そっか……良かった」
トーマのホッとしたような呟きを聞きながら、ルウンは心の中で何度も“ルン”と呟いてその響きに浸る。
なんだかくすぐったいような気がするけれど、全然嫌な感じはしなかった。
「……?」
突然目の前に差し出された右手に、ルウンは顔を上げてトーマを見つめる。
「昨日もしたけどね。でも、改めてこれからよろしくの意味を込めて」
そう言って笑うトーマに、ルウンは差し出された手をしばらくぼうっと眺める。
まさか、握手というものをこんなに何度も経験することになるとは思わなかった。
一度顔を上げて笑顔のトーマを見つめると、また差し出された手に視線を落として、ようやくルウンはおずおずと手を伸ばす。