銀色の月は太陽の隣で笑う

その手が差し出した手に届くのをジッと待って、トーマは指先がちょこんと触れたルウンの手を、迎え入れるようにして優しく握った。


「これからよろしくね、ルン」


手の平に感じるトーマの温かさ、久しく感じることのなかった自分以外のその温もりに、ルウンの胸が微かに高鳴る。


「これからは遠慮なくルンって呼ぶから、僕のことも気軽にトーマって呼んで」


コクコクと何度も頷いてみせるルウンに、トーマは笑みを零す。

天気は快晴、ぬくぬくとした気温の中、向かい合うトーマにルウンは、はにかむようにして笑ってみせる。

初めて見るルウンの笑顔に、トーマはなんだか嬉しくなった。

ようやく心を許してもらえたような、少しだけ近づけたような、そんな気がしたから。


「よろしく。……トウマ」

「……ん?」


先ほどの自分と同様、やや異なる音の響きが聞こえて、トーマは首を傾げる。

けれどすぐに「まあ、いっか」と笑った。

ちょっとくらい響きが違っても、自分が呼ばれていると分かればそれでいい。

午後の日差しが柔らかく降り注ぐ中、風が枝葉とルウンの白銀の髪を優しく揺らしながら通り過ぎて行く。
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