溺愛なんて聞いてない!

「…………一花。バカらしい噂聞いたけど?まさか真に受けてるとか」

「バカらしい…?」


煌の視線は立花君から外れずに相変わらず冷ややかに見下ろしていた。


あぁ、立花君とのことですか。


「煌、ちゃんと身の程を知ってるよ。あるわけないじゃん、立花君に悪いよ」

「だ、そうだ」

「っ、」


煌の登場で静まり返っていた教室が再びざわめいていた。
話題はやっぱり煌で。

「わ、北王子君だ!」
「いつ見ても格好いいねー」
「ね、二ノ宮さんとこに来てるの?」
「なんか幼馴染みらしいよ?」
「えーいいなーめっちゃ自慢じゃん」
「二ノ宮さんってあの地味な子でしょ?立花君とも仲良いみたいだし何様?」
「あはは、まさかの勘違い?」
「だよねー」


いつも通り繰り返される軽い悪口。
慣れたこととはいえ聞きたい訳じゃない。
だけど相手をするだけ無駄な事ももう知っているわけで。

だけど、乙女心としては目の前にいる煌の耳に入る事はいつまでたっても慣れなかった。
煌が聞こえてない筈はない。
私に聞こえているんだから。


散々言われ慣れてて自分が煌に釣り合っていないことだって自覚してるし、だからと言って立花君とだっても身の丈くらい知っている。

だから小さな自分の世界で静かに過ごすようにしてきたのに。
煌といるだけで華やかな世界に引きずり出されてしまう。そしてこの仕打ちだ。

溜め息だって出るってもんだよ。
━━━━━━━━━━━━はぁ。



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