桜時雨の降る頃
帰宅後、わたしが鼻息荒く母にその事を報告したら、母は笑っていた。


「あなたたちもそんな事言う年頃になったのね」

と呑気なもんだ。

でも、その後言われたことは
ちょっとだけわたしの胸に残った。


「うかうかしてると、本当に2人とも誰かに取られちゃうわよ? 絶対かっこよくなるから」


……人の幼馴染つかまえて何言ってるんだろう、お母さんてば。

当時はそう思ったけど、その言葉が現実になるなんて予想もしていなかった。




2人がかっこいい部類に入るということも、この時ようやく、そうなの?という程度に認識したくらいだった。


考えてみれば、双子というだけでも学年での知名度は抜群。

運動会で毎年リレーの選手になるほど足も速い。

テストの点数もいつもいい。

顔は……確かにいい方かも。

髪はサラサラで色素薄め。人懐こい大きめな瞳。

小さい頃から、2人の周りには人が集まっていた。


……そうか。人気者なのは分かってたけど、

男子としてちゃんと見たことなかった。

いつも一緒にいたから見えなかったんだ。

友達の言うとおりだった。

いわゆる“カッコイイ”要素はほとんどクリアしてるんだ。

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