桜時雨の降る頃
その場にいる全員の、息を呑む音が聞こえたような気がした。


さすがのキャプテンも、一瞬何を言われたか分からなかったのか口を開けて呆然としている。


「雫、帰るぞ。いつまで待たせんだよ」

「えっ? で、でも」

もう一緒に登下校しないって言ったばかりだし。

ていうか先輩たち無視? 無視なの?

「帰ろ、雫。 先輩、俺たちまだ“ガキ”なんで
他当たってください」

陽斗がわたしの方へ歩み寄り、手首をそっと掴む。


「これ以上、雫に何かしたらこのこと言いふらすからな。内申に響くかもね?」

すっかりタメ口で威圧する朔斗。
その口元にはニヤリと悪魔のような笑みを浮かべている。


内申というワードに恐れを抱いたのか、先輩は黙って2人を睨みつけた。


「練習中に不当なしごきしてんの見つけたら倍返しするから。じゃーな、センパイ」


朔斗はそう言い放って、くるりと踵を返した。

それに倣って、陽斗もわたしを連れて朔斗の方へ歩いていく。


気まずさから俯いて歩いていたけど、先輩の横を通る時にチラッと見たら

悔しそうに口元を歪めている姿が目に入った。
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