桜時雨の降る頃

朔斗に少しだけ寄りかかったまま、
わたしは振り絞るように口を開いた。


「朔斗は、ずるいね」

「……あ?」

「そうやって、わたしには優しいとか。みんなには冷たいのに」

「…………」

「陽斗のことも。まるで自分は関係ないみたいな」

「……それは」

「わたしの気持ちはどうでもいいの?」

何か言いかけようとした朔斗の言葉を遮って、たたみかけるように責めてしまった。


数秒の沈黙後、ためらいがちにもう一度朔斗は口を開く。


「俺には、

……陽斗と雫は特別だから。

雫の気持ちも大事だけど、同じくらい陽斗の気持ちも大事なんだよ」


ーーーーあぁ、ダメだ。

蓋をしていた気持ちがムクムクと広がって

溢れかかっている。

忘れていたつもりだったのに

朔斗の胸の音が心地よく聴こえるこの距離を

手放したくない、と思い始めてしまう。


「……わたしも同じだよ。陽斗も朔斗も、大事だよ」


2人とも大切な存在であることに変わりはない。

たとえそれが報われない気持ちを抱えていたとしても。



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